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太宰治の女生徒

恩師のブログの関わりで青空文庫行って、太宰治の女生徒を読んでみたりしました。

前置き。
米光先生のブログ文章術の課題の話なのですがね(^^)
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お皿ひとつひとつに、それぞれ、ハムや卵や、パセリや、キャベツ、ほうれんそう、お台所に残って在るもの一切合切、いろとりどりに、美しく配合させて、手際よく並べて出すのであって、手数は要らず、経済だし、ちっとも、おいしくはないけれども、でも食卓は、ずいぶん賑やかに華麗になって、何だか、たいへん贅沢な御馳走のように見えるのだ。
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かの文を短いセンテンスにしてみよう、という課題がブログ文章術で出まして、何だかだらしなく右往左往する文章だなあと思って、自分なりに書き換えてみました。

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ハムや卵や、パセリや、キャベツ、ほうれんそう。
お台所に残って在るもの一切合切。
お皿ひとつひとつに。それぞれを。
手際よく並べて、美しく配合させて、いろとりどりにして、出す。
手数は要らず、経済的なのに。
食卓が、ずいぶん賑やか、華麗になって、たいへん贅沢な御馳走のように見えるのだ。

ちっとも、おいしくはないのだけれどね。
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課題はこんな感じ。無理に最後を落としちゃうのが私の作風だなあとか思ったり。

で、もはや大喜利と化した「ブログ文章術」のコメントを読んでましたら、「これは太宰治の女生徒からの引用では?」と書込があったので、早速青空文庫で読んでみました。

ここからが本題。

なるほど、文章が右往左往するはずですよ、この作品は戦前の女学生の一人称視点で、一日を描き出しておるわけです。
女学生というのは、今も昔も、唐突に悲しくなったり、嬉しくなったり、幸福感にかがみ込んでみたり、大人なんかになりたくねーやとお風呂で暴れたりするわけです。
全体を通して読むと、一見悪文と思われる文が、すごいリアル感で迫ってきて、おお良い小説だなあと感嘆してしまいました。
筋とかはなくて、全編情感のみ、眼鏡っ娘女学生が朝ダラーンと起きて、夜ダラーンと寝るまでの色々な事象を気持ちと共に描いておりました。

私は「人間失格」を読んでから太宰はんが大嫌いでして、あまり読んだ事が無かったのですが、やっぱり凄い作家さんだなあと見直しました。ここまで文章で心理にダイブできるのかーと、ほれぼれ。
ほれぼれしつつ、なんつーか、ここまで女学生の心理をロールできる太宰はんに苦笑い。この先生は変態だー。

件の文章もそのままありまして、あれは女学生がお客さんにお料理を作っているシーンなのですな。なんとなく嫌なお客さんがきて、お母さんがオホホとか笑って、お母さんが遠くなって寂しいとか思いつつ、料理をするわけっす。(戦前の女生徒なので、結構家のことしてたりしますな。料理も洗濯も女生徒の仕事っぽい。それに関しては当たり前の事として働いております)

この一人称の情感とかリアル感とかを盗みたいなあと思ったのでありました(^^)


太宰治「女生徒」(青空文庫)

修正:タイトルを女学生と間違えておりました(^^; いつもながら詰めが甘い。
by sakananovel | 2006-04-05 17:06 | 読書


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