オマケノベルの原稿があつまりつつあり

なんつーか、「鍋」は異様にむずかしいっぽい。

日常的な物なので、ドラマを混入しにくいというか。
執筆者の苦闘の声が聞こえるのであります。

やっぱ、話になんか中核が無いと、まとまり感がでないというか、短編でテーマが日常的だとやっぱり難関っぽい。

で、なんとなく思いついたので、鍋テーマのショートを書いてみたっす。
執筆時間一時間ぐらいかな?
--------------------------------------------------------
すき焼き召還

「すき焼き出来たよー」
「喰いたくねえ」
「君が食べたいって言ったんじゃないか」
「だりい、めんどくせえ、喰いたくねえ」
 そう言うと健三はころりとコタツに足をつっこんで横になった。
 狭いアパートにコタツ。
 その上にコンロが置かれて、すき焼きがくつくつ煮えている。
 すき焼きの鍋の湯気の向こうで女の子が一人むくれていた。
 豊満な身体を紅いライダージャケットで包み、口には八重歯、目がくりっとして可愛い感じ、頭の上には犬の耳が生えていた。
「あたし一人でたべちゃうぞ」
「喰いたければ喰えよ」
 健三の声には元気がない。
 犬耳娘は卵をぱかりと割って小鉢に中身を落とし、ぐるぐるかき混ぜた。
「良い肉なのに、美味しそうに出来たのに」
「肉はスーパーの奴で、割り下はシマダヤのやつじゃんか。野菜と焼き豆腐を切っただけだろ」
「でも大変だったのに」
 犬耳娘は涙目だ。
「二人で鍋食べても旨くねえ。鍋は大勢でワイワイと食べるもんだ」
「だれか呼ぶ?」
「と、友だちがいねえ」
「さびしいやつ」
「ちょっと前までいたんだけど……」
「ケンカしたの?」
 犬耳娘はネギをとって卵にくぐらせ、口に入れた。
「おいしー」
「同人ゲームを作ってた」
「エロいやつ?」
「ああ、まあね。方向性の違いで大喧嘩したんだ」
「他に居ないの?」
「最強の五人組だった、だが今は居ない。だから鍋は食いたくねえ」
 犬耳娘はしらたきを取った。食べた事がないのか、しげしげと観察している。
「電話してさあ、仲直りすればー」
「……む、無理だ。もう破綻したんだ」
「ためしてみれ」
 犬耳娘は健三の携帯を拾って、投げた。
 健三は身体を横に丸めて携帯をぎゅっと握りしめた。
「ためしてみれ」
「仲直りできると思うか?」
「しらないけど、ためしてみれ」
「そうだな、せっかくのすき焼きだしな……」
 健三は携帯を睨みつけていた。
 犬耳娘は肉を取ると、卵に絡ませて食べた。
「はふはふ」
 健三は携帯のボタンを押した。
「あ……。あ、おれ、健三……。あー、そのー、えっ! いや、そんな、俺の方が謝ろうと、ごめん、悪かった。いや、そんな、えーっ! いやいや、違うって、そうじゃないよ。悪いのは全面的におれおれ。だから、うん、うん。いや、うん、電話して良かったなあ。ああ、うん。今すき焼きしてんだ。こないか? え、 近くにいるのか? うん、来い来い。沢山用意してるし、うん、うん、ありがとう」

 犬耳娘はお麩をくわえてニマニマしていた。
「案ずるよりも産むが易しってね」
 健三は照れくさそうに、怒った顔を作った。
「うるせえっ お前なんかしたろうっ」
「してないしてない、めんどくさい」

 一時間もしないうちに、仲間達が集まった。
 わいわいとすき焼きを囲んだ。
「これ、健三ちゃんが作ったのー? うそー、うまー」
「タカシ、肉ばっかたべんなよっ!」
「いいじゃないっすか、沢山あるんしょ」
「あんたは、そんなんだからー」
 アパートには健三を混ぜて男三人女二人が集まり、すき焼きをつついていた。
 犬耳娘の姿は無かった。
 わだかまりは消えていた。
 開発途上のゲームを夏までに作ろうと相談がまとまりつつあった。

「なにこれ? 悪魔召還プログラム?」
 音楽のミカが健三のノートパソコンに立ち上がったプログラムを見てそう言った。
「うん、ネットで拾った」
「ペルソナーっ!ってやつ?」
「ゲームじゃなくて、悪魔を呼び出す方のやつだよ」
「へー、悪魔呼び出せた?」
「一度ケロベロスを見たくて、呼んだんだ」
「へー、来たかい?」
 背景師のタカシが笑って春菊を口に運んだ。
「来たんだけど、犬耳娘でさあ。魂と交換に願いを叶えますって言うんだ」
「おお、エロゲー展開、勿論、ムフフな事を」
「いや、俺めんどくさくてさあ、『すき焼きくいてえ』って願った」
「あはは、魔法でぽんって作ったの、これ?」
「いや、近所のスーパーで買いだししてたよ」
「庶民的だなあ。でもそのネタ良いね、次のゲームで使おうよ」

 健三の目が霞んできた。
 ああ、ケロベロスに魂取られて死ぬんだなと思った。
 でも、なんだか、すごく最後に幸せで。

 やっぱり大勢で食べる鍋はおいしいよな……。

 やわらかく微笑んで健三は死んだ

 眠るように息絶えた健三に気づかずに、四人の男女は、わいわいとすき焼きを食べ続けていた。
[PR]
by sakananovel | 2007-10-12 00:04 | 同人ゲーム製作


<< 鏡先生のシナリオ講座12回目 下窓と全画面の文体の違い >>